#002 美味しいお菓子は人の心を幸せにする
- 石川 浩(お菓子の家スワン)
- 2017年1月17日
- 読了時間: 3分

「ケーキが食べたい。だからケーキ屋になる」菓子作りをはじめて五十年になる「お菓子の家スワン」のパティシエ石川浩の原点は、ごくシンプルなものだった。
従業員曰く「ジャムおじさんに似ている」石川は、柔和な笑顔でお客さんを迎える。工房に朝七時から立ち、閉店後は二階の住居で夕食を食べながら次なるアイデアを思い巡らせ、また工房に降り試作する。
実は定休日が一番慌ただしいとのことで「仕込みをしていると、明かりを見てお客さんが買いに来ることもあります」。お菓子には国産の材料を厳選し、春日部産の梨や赤米も使用している。石川が材料にこだわりはじめたきっかけは二十年前にさかのぼる。

わが子に「ケーキを食べさせたい」とアレルギーを持つ子供の母親が来店した。アレルギー対応商品が今ほど販売されていなかった頃だが「やってみましょう」迷わず答えた。
卵や小麦粉を使わず幾度となく試作し、「これはケーキと言えるのかな」と疑問に思うこともあった。「それに……」と石川は続ける。
「アレルギー対応とうたうことは、リスクを背負うことなのです。人の命を預かるようなもの」

高橋チーフによると、「アレルギー対応のナチュールシリーズは飛ぶように売れる商品ではなく、実はロスが多い。でもアレルギーがある方のために作り続けなければ」。現在は卵・乳・小麦アレルギー対応のケーキを三種類扱っている。
仕事は大変な時もあるが、それでも頑張ってこられたのはお客さんとのつながりがあったからだ。
「お客さんの笑顔や、アレルギーがあるのにケーキが食べられたと喜んでくれた時は、この仕事をしていて本当に良かったと思えます」
石川の信念である言葉との出会いも『つながり』から。「お客さんから、『美味しいお菓子は人の心を幸せにする』と書かれた色紙をいただきました。まさにこの想いで菓子作りをしています」

そんな真摯な姿勢やたゆまぬ努力が評価され「埼玉県優良小売店表彰 最優秀賞」をはじめとして数々の表彰を受けている。
三十代で独立し、わき目も振らずにやってきた。時代は変わったが自分はまだ続けられている。だからこそ次世代への強い思いがある。
「できる限り若い世代を守りたい。そして、地元のお客さんとのつながりを守っていって欲しい」
取材中、思いがけずお客さんから少し遅い誕生日プレゼントをもらった石川。全身全霊で作るお菓子という名の『幸せ』は、形を変えて石川の元に返ってきているようだ。

石川 浩(Hiroshi Ishikawa)
お菓子の家スワン パティシエ
住 所|〒344-0011 春日部市藤塚1909-4
時 間|10:00~19:30
定休日|毎週月曜日 TEL|048-755-7514
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