#001 既成概念を覆し、新しい畳文化をつくりたい
- 福島 充(福島畳店)
- 2017年1月18日
- 読了時間: 2分

畳で作った財布を腰にぶら下げ、畳でできたわらじを履き、緑色の眼鏡をかけた一風変わったいでたちの福島充は、福島畳店の三代目。小渕に店を構えて八十年の畳店を父と共に営んでいる。
長い年月を経て畳はどのように変化したかを尋ねると、「畳は、基本的に昔と作り方や構造は変わっていません。土台となる畳床をイ草で織られた畳表で包み、両端に畳縁を縫い付けます」。また、畳の大きさはどれも同じではない。「畳の大きさには一応規格がありますが、一枚一枚寸法が違います。部屋の寸法に合わせて畳を作るんです」

実は寸法を測るのが職人の力量を一番問われるところ。ピタゴラスの定理などの数式を使い、畳寸法学という数式の教本があるほど畳と数式は切っても切り離せない。
子供の頃は剣道に勤しむ一方、ラジカセなどの機械を分解したりミニ四駆を作ったり、物づくりをする職人としての片鱗をのぞかせていた福島。少しやんちゃだった高校時代を経て、「勉強が嫌いだったから(笑)」家業を継ぐ道を選んだ。

現代の名工 奥田芳雄の営む京都伏見の畳店で弟子として住み込みで働きながら、夜は京都畳技術専門学院で四年間学んだ。
自称勉強嫌いの福島だが畳のこととなると別で、畳文化と和室での作法を知るため京都で茶道を学んだ。三年前からはイ草について深く知るため、イ草の産地熊本県にあるイ草農家の収穫を手伝いに行っている。
「毎年八月の一番暑い時期にイ草を刈ります。朝三時に起きて夜八時まで。全ての工程が重労働で本当に大変だと思いました」

熊本県には、畳について学ぶために全国から畳職人が集まってくる。必然的に職人同士が集まり、勉強会を開くという。
「みんな、商売をちゃんとやらないと畳文化がなくなるという危機感がある。新しい商品を作ったり、自分で培った情報を教えてくれたり。自分も、伝統文化を守りつつ、既成概念を覆してインテリアや身近に使える畳など、どんどん新しいものを作っていきたい」
職人同士で切磋琢磨する良き場となっている。
「畳屋やってて、物を作るって楽しいと思います。ぬくもりも伝わるし、手作りの物は一つとして同じ物はないんですから」
トレードマークの眼鏡の奥には、新しい伝統を作って行く気概に満ちた、まっすぐな瞳があった。

福島 充(Mituru Fukushima)
福島畳店 社長 一級畳製作職人
住 所|〒344-0007 埼玉県春日部市小渕1404
電 話|048-752-3802
時 間|10:00~19:30
定休日|なし
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